東京大学の解剖学者の養老猛さんの『脳の見方』という本があります。
その中に確かこんなことが書いてありました。石こうに人間の顔を押しつけて形を造ったとき、鼻の部分は窪んでいるはずです。その石こうを正面から写真に撮ってそれを人が見ると、鼻の部分は出ていると知覚するのだそうです。これは「鼻は出ている」という先入観があるからだそうです。
もっともなことだと思います。でも、モノを見るとき先入観を持つということは、新しい発見の可能性を無くしているのではないでしょうか?先入観を無くして、可能性を十分に引き出すのが設計の役割なんだと思います。たとえば細長い敷地を見たとき、ダメだと諦めるのはかんたんです。でも、そういう難しい敷地にこそ今までにない気持ちのいい空間をつくる可能性があるかもしれません。時間の許す限りいろいろな可能性を探求して、気持ちのいい空間を創りだしていきたいと思います。