月別アーカイブ: 2003年7月

旅行

 しばらくの間お休みをいただいて、フランス・スイスの建築を見に行ってきました。ただでさえ設計が遅れがちなのに、設計をお待ちいただいている皆さんには本当にご迷惑をおかけします。この場を借りてお詫びいたします。

 ヨーロッパには見たい建物がいっぱいあるのですが、今回はル・コルビジェ(注1)とピーター・ズントー(注2)に絞って11の建物を見てきました。どの建物も期待を裏切らない素晴らしい建物ばかりでした。

 特に、コルビジェの住宅には細かな工夫や気遣いがされていることに驚きました。コルビジェの建築は世界中で研究されていて、その形については数多くの書物が出版されています。だからその空間が視覚的に魅力的な建築であることは分かっていました。雑誌に取り上げられる日本の住宅の中には視覚的に小綺麗でも、キッチンが使いにくかったり、通風が出来なかったりと、住宅としての基本機能が満たされていないのではと思うことがよくあるのですが、コルビジェは違いました。「なるほど」と思わずうなってしまうような工夫が随所にしてあるのです。暗くなりそうな所には効果的なトップライトがあったり、きちんと通風用の開口があけてあったり。そういう基本機能を十分すぎるほど満たした上で詩情的な空間を造り上げているのです。これは、僕が普段気をつけていたことでもあったんですが、コルビジェの住宅はそれらがすごく高いレベルでまとめられていました。

また、この部分はどうしてこうしたんだろうかという所には、ちゃんと回答が用意されているのです。少し変わった納まりをしている部分には必ず機能的理由がある。結果としてその部分が見た目にも綺麗だったりしているのです。単純に綺麗だからそうしましたというのだと、設計者の主観だから僕たちには理解できないのです。でも、コルビジェの場合、機能と形が密接に結びついているから、よく観察すると回答が見つかるんです。なんだかコルビジェと話をしているようで見ていて楽しくなりました。

そういうちょっとした工夫のある家って楽しいですよね。

  • 注1:Le Corbusier(1887-1965)スイス生まれ。近代建築の巨匠といわれている。ロンシャンの教会など。キュビスムの画家としても有名。
  • 注2:Peter Zumthor(1943-)スイス生まれ。