設計するということ

仏教の中の意識作用として八識(九識・十識の場合も)というものがあるそうです。

眼識、耳識、鼻識、舌識、身識、意識、末那(まな)識、阿頼耶(あらや)識の8種だそうです。

このうち最初の5つは五感に近いもので、その次の「意識」は頭の中に今あることだそうです。

ここまでは文字から理解できますが、最後の二つは見慣れない言葉です。

ここで書きたいのは「末那識」についてです。

とある僧侶の説明では

末那識とは頭の中にあるのですが、今は意識されていないもので
日常生活の中でふとした時に気づくもの。

なのだそうです。

これを聞いた時、設計と同じだなと思いました。

新しいものを設計をする時、すぐに良いプランが描けるわけではありません。
すぐに描けるものは深みのないものがほとんどです。
設計に取りかかる時、まずは色々な条件や制約を頭の中に入れます。
敷地、建て主の要望、建て主との雰囲気、予算・・・。

そこからスケッチブックにいろんなことを描きます。
最初は手探り状態で、何日も何日も良い案が出てこないことがほとんどです。

それが、日常生活の中でふと
「こんな風にしたらどうだろうか」
と映像が浮かんでくることがあります。
それをスケッチブックに描いてみると、以前よりもずっと良い案であることが多いのです。

その過程はまさに自分の気付いていない潜在意識を呼び起こす作業なのだと思います。

それが末那識ではないかと思います。
設計とは末那識を呼び起こす作業なのだと思いました。

そして、その提案に対して
「想像していなかった案だけど、良い案ですね」
といわれることが良くあります。
建て主さんの持つ潜在意識を顕在化させられるのは嬉しい限りです。